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2024年6月の青 〜憧れの藍しごと〜
「いつかは、すくも藍で染めたい」——そう願い続けて、どれほどの年月を重ねてきたでしょう。 草木染めをすればするほど、その憧れは大きく膨らみ、ついに今年、NONAでのすくも藍への挑戦が始まりました。 はじめの一歩 やりたいと願いながらも、「いつか」と先延ばしにしてきたこと。けれども仲間と共に歩む今だからこそ、「できる」と思えたのです。すくも藍で染めるとは——。藍師が育てた、たで藍を乾燥・発酵させ、すくもとし、染師が天然の素材だけで藍を建て、布や糸に色を宿す。一度建てた後も日々の手入れを欠かせない、根気の要る仕事です。けれども憧れは、挑戦の原動力となりました。 徳島の藍師を訪ねて ご縁がつながり、藍の本場・徳島へ。梅雨の晴れ間、吉野川を越えて「藍住町」の名を目にしたとき、胸が高鳴りました。 「Watanabe's」を訪れると、藍師・渡辺健太さんが、土づくりから藍の栽培、収穫、すくも作り、染色まで一貫して取り組む姿に圧倒されました。すぐ隣の養豚場の廃棄物で堆肥を作り、山羊が草を食べ、地域と共に営まれる畑は、まさに未来を見据えた藍しごとでした。 未来に藍を残そうとする強い眼差しが印象的でその真摯なまなざしに触れ、私たちもまた、藍を未来に伝える責任を感じずにはいられませんでした。 藍甕と向き合う時間 工房には状態の違う藍甕がずらりと並び、毎日丁寧にひとつづつ記録が取られています。NONAメンバーそれぞれが思い思いの素材を藍甕に手をつけて染めていきます。 若い藍甕は濃く力強く、年を重ねた甕は淡くも繊細な色をくれる。重ね染めの作業に夢中になり、自然の神秘と向き合う時間が何より心地よく感じられました。そして「すくも藍を建てる研修」では、加藤先生の講義を受け、藍を建てるプロセスを学びました。丁寧で分かりやすい説明に、心から納得し、これから自分たちで建てていく勇気をもらいました。 歴史と文化を未来へ 藍を学びに立ち寄った「三木文庫」では、阿波藍の歴史や道具、人形浄瑠璃など阿波文化とのつながりに触れ、藍師がいて、三木商会などの藍商がいる、藍が地域文化を支えてきた深さを実感しました。学芸員・船井さんからいただいた「澄んだ色を染めていってね」という言葉は、私たちの胸に深く刻まれています。 さらに「大谷焼窯元 森陶器」では、巨大な藍甕を作る職人の姿を目にしました。職人がもう1名になってしまったと伺い、ものづくりを続ける難しさと尊さを改めて感じました。 にほんのいろを未来へ 化学染料の時代を迎えても、全てを否定せず、化学染料の商売も取り入れながらも、阿波藍を守った人々。そうして知恵と努力で受け継がれてきた「にほんのいろ」には、数えきれない人々の想いと歴史が宿っています。 NONAの「にほんのいろ」シリーズもまた、その文化を未来へつなぐ小さな一歩でありたい。 この徳島での貴重な藍研修の後、無事に藍が建ち、NONA自家製の藍を守って糸を染めつけています。 1本の藍色の糸に人類の夢とロマン、歴史と愛が詰まっています。 どうぞ、これからも「にほんのいろ」を見守っていただけたら嬉しいです。 梨佳 Watanabe’s https://watanabes.jp三木文庫 https://www.mikibunko.jp森陶器 https://morigama.jp 山形「紅花」紀行はこちら
2024年6月の青 〜憧れの藍しごと〜
「いつかは、すくも藍で染めたい」——そう願い続けて、どれほどの年月を重ねてきたでしょう。 草木染めをすればするほど、その憧れは大きく膨らみ、ついに今年、NONAでのすくも藍への挑戦が始まりました。 はじめの一歩 やりたいと願いながらも、「いつか」と先延ばしにしてきたこと。けれども仲間と共に歩む今だからこそ、「できる」と思えたのです。すくも藍で染めるとは——。藍師が育てた、たで藍を乾燥・発酵させ、すくもとし、染師が天然の素材だけで藍を建て、布や糸に色を宿す。一度建てた後も日々の手入れを欠かせない、根気の要る仕事です。けれども憧れは、挑戦の原動力となりました。 徳島の藍師を訪ねて ご縁がつながり、藍の本場・徳島へ。梅雨の晴れ間、吉野川を越えて「藍住町」の名を目にしたとき、胸が高鳴りました。 「Watanabe's」を訪れると、藍師・渡辺健太さんが、土づくりから藍の栽培、収穫、すくも作り、染色まで一貫して取り組む姿に圧倒されました。すぐ隣の養豚場の廃棄物で堆肥を作り、山羊が草を食べ、地域と共に営まれる畑は、まさに未来を見据えた藍しごとでした。 未来に藍を残そうとする強い眼差しが印象的でその真摯なまなざしに触れ、私たちもまた、藍を未来に伝える責任を感じずにはいられませんでした。 藍甕と向き合う時間 工房には状態の違う藍甕がずらりと並び、毎日丁寧にひとつづつ記録が取られています。NONAメンバーそれぞれが思い思いの素材を藍甕に手をつけて染めていきます。 若い藍甕は濃く力強く、年を重ねた甕は淡くも繊細な色をくれる。重ね染めの作業に夢中になり、自然の神秘と向き合う時間が何より心地よく感じられました。そして「すくも藍を建てる研修」では、加藤先生の講義を受け、藍を建てるプロセスを学びました。丁寧で分かりやすい説明に、心から納得し、これから自分たちで建てていく勇気をもらいました。 歴史と文化を未来へ 藍を学びに立ち寄った「三木文庫」では、阿波藍の歴史や道具、人形浄瑠璃など阿波文化とのつながりに触れ、藍師がいて、三木商会などの藍商がいる、藍が地域文化を支えてきた深さを実感しました。学芸員・船井さんからいただいた「澄んだ色を染めていってね」という言葉は、私たちの胸に深く刻まれています。 さらに「大谷焼窯元 森陶器」では、巨大な藍甕を作る職人の姿を目にしました。職人がもう1名になってしまったと伺い、ものづくりを続ける難しさと尊さを改めて感じました。 にほんのいろを未来へ 化学染料の時代を迎えても、全てを否定せず、化学染料の商売も取り入れながらも、阿波藍を守った人々。そうして知恵と努力で受け継がれてきた「にほんのいろ」には、数えきれない人々の想いと歴史が宿っています。 NONAの「にほんのいろ」シリーズもまた、その文化を未来へつなぐ小さな一歩でありたい。 この徳島での貴重な藍研修の後、無事に藍が建ち、NONA自家製の藍を守って糸を染めつけています。 1本の藍色の糸に人類の夢とロマン、歴史と愛が詰まっています。 どうぞ、これからも「にほんのいろ」を見守っていただけたら嬉しいです。 梨佳 Watanabe’s https://watanabes.jp三木文庫 https://www.mikibunko.jp森陶器 https://morigama.jp 山形「紅花」紀行はこちら

ガラスヘッドまち針 パッケージ開発のよもやま話
広島の匠の技には、300年以上の歴史があります。 日本の広島で作られているまち針を使うことで、MADE IN JAPANのものづくりを続けて未来へ繋げていきたいという思いを詰めました。 針を収納する紙製の筒箱は、優しいクリーム色。紙の原料には、手まりでも使用するもみ殻が使われています。 ちょっと想像つかないかもしれませんが、NONA立ち上げの際に仕入れで一番最初に取り組んだのが、実はもみ殻なんです。手まりづくりはもみ殻なしでは始まらず、NONAのものづくりを支えています。もみ殻も大切に個包装にする作業を続けているスタッフもいます。 筒箱の紙を選定に行った際に、この紙に一瞬にして惚れ込み即決しました。もみ殻を大事にしているNONAにぴったりのアップサイクルペーパーに出会うことができた嬉しさは忘れません。今では大きめの筒箱も同じ紙で作り、完成品の手まり用のパッケージとして使用しています。 日本では年間約200万トンのもみ殻が発生しており、うち20%は廃棄されています。NONAの全てものづくりを通して、再利用することの重要性を伝えていきたいと考えています。 一見すると真っ黒に見える印字カラーは、日本の伝統色「消炭色」を採用しています。ほんのり柔らかいチャコールグレー。和の色はすっと心に馴染みます。 ガラスヘッドまち針のご購入はこちら
ガラスヘッドまち針 パッケージ開発のよもやま話
広島の匠の技には、300年以上の歴史があります。 日本の広島で作られているまち針を使うことで、MADE IN JAPANのものづくりを続けて未来へ繋げていきたいという思いを詰めました。 針を収納する紙製の筒箱は、優しいクリーム色。紙の原料には、手まりでも使用するもみ殻が使われています。 ちょっと想像つかないかもしれませんが、NONA立ち上げの際に仕入れで一番最初に取り組んだのが、実はもみ殻なんです。手まりづくりはもみ殻なしでは始まらず、NONAのものづくりを支えています。もみ殻も大切に個包装にする作業を続けているスタッフもいます。 筒箱の紙を選定に行った際に、この紙に一瞬にして惚れ込み即決しました。もみ殻を大事にしているNONAにぴったりのアップサイクルペーパーに出会うことができた嬉しさは忘れません。今では大きめの筒箱も同じ紙で作り、完成品の手まり用のパッケージとして使用しています。 日本では年間約200万トンのもみ殻が発生しており、うち20%は廃棄されています。NONAの全てものづくりを通して、再利用することの重要性を伝えていきたいと考えています。 一見すると真っ黒に見える印字カラーは、日本の伝統色「消炭色」を採用しています。ほんのり柔らかいチャコールグレー。和の色はすっと心に馴染みます。 ガラスヘッドまち針のご購入はこちら

2024年7月 山形研修 〜最上紅花 1%の奇跡〜
もうすぐ1年前になろうとする思い出深い研修旅行を振り返り、紀行とします。 「紅花」と聞いて、何を思い浮かべますか?私は、薬効がある紅花オイル、血行促進になるハーブティー等の健康食品とドライフラワーのイメージ。恥ずかしながら、紅花染め?と聞いても、名前は紅花だから、赤く染まるのかな?ぐらいの知識でした。調べてみると、とても歴史のある草木染めであることがわかり、楽しみいっぱいで参加しました。 1.山形の誇りである紅花 紅花は、山形県が日本一の生産量を誇り、県花にもなっています。山形駅に到着すると、紅花が飾ってあり、写真、歴史が簡単に掲示してあったり、と紅花が「ようこそ!」と迎えてくれるようで、嬉しかったです。 研修を終える頃には、紅花が過去にもたらした莫大な富と文化と伝統がわかり、日本農業遺産、日本遺産になっている事、世界農業遺産申請中である事も納得しました。紅花の原産地はイスラエル。日本渡来は、3世紀中頃。平安時代は、「末摘花」と呼ばれ、源氏物語の巻名の一つともなっている雅な花てす。山形での栽培は、室町後期からで、貴族の艶やかな衣装の染料や口紅として重宝され、江戸時代全盛期を迎え、明治期に、化学染料や中国紅花の輸入で大打撃を受け、第二次大戦後一時期途絶えてしまったようです。戦後発見された種を元に復活し、現在に至ります。 2.山寺が支えた紅花文化 山寺(立石寺)が、深く関わった紅花栽培と紅花交易は、莫大な富と文化をこの地にもたらした、と言われているので、まずは山寺を訪ねることが旅の始まりとなりました。 鬱蒼と茂る木々に囲まれた千数百段もの参道石段と奇岩怪石の景勝地「山寺」。東北を代表する霊場であり、山自体がお寺となっているとの事。本堂には比叡山延暦寺から分火された千年以上燃え続けている”不滅の法灯”がありました。 この山門から続く石段は、一段登る毎に煩悩が消えていくと言われる修行の道でもあり、これを登りきった所に断崖絶壁に建てられたお堂(五大堂)があり、絶景を一望できるとの事です。スタッフは、皆さん感動されてましたが、私は当時、最大に肥えていて、小雨も降る中、しんどくて千段弱のところでギブアップ、、、。煩悩を全て消す事が出来ませんでした。それが私(笑)。 紅花栽培は、この寺を建立した慈覚大師の随行六人衆が起こした寺の領地で、江戸時代初期から行われたようです。最上川の肥沃な土地と朝霞の立ちやすい気候風土は、紅花を育む適地で、広く栽培されるようになり、日本一の紅花生産地に。 収穫された紅花は、紅花商人の屋敷で煎餅状に丸められた「紅餅」に加工され、最上川を介して上方へと運ばれ、紅染色、紅粉となって雅やかな京文化を支えることとなります。そして、紅花大尽と称される豪商、豪農が輩出されました。この時代、紅の価格は米の百倍、金の十倍。莫大な富を生み出し、財を誇示する屋敷を構えたとの事。この交易文化を色濃く残す白壁の蔵座敷が今でも数多く残っており、艶やかな雛人形や紅花染めの衣装を着て舞う舞楽が受け継がれ、華やかな彩りを添えています。 3.松尾芭蕉が詠んだ紅花の句〜富裕層だけでなく、庶民の生活に彩りを添えた紅花〜 松尾芭蕉は、元禄時代、山寺参詣の際に、あの有名な「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を詠んで、奥の細道に遺していますが、道すがら紅花を目にした際も句を2句詠んでいます。一つは「眉掃き(まゆはき)を俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花」です。いずれ女性のくちびるを彩る紅となる紅花。その形も女性の化粧に使う眉掃き(白粉をつけた後で眉を払うために使われた小さな刷毛)を彷彿とさせる、という意味のようです。艶やかな紅と唇。京女の艶姿を読んだものとされています。私はこの句より、奥の細道句集には遺されなかったけれど、「行く末は誰が肌ふれん紅の花」の方が断然好きです。一生懸命に紅花の花を摘む百姓の娘達。彼女達は、一生に一度もくちびるに紅をさすことは出来なかった。そんな彼女達の心情を詠んだものなのでは、と言われています。私の摘んでいるこの紅花は、将来誰の肌に触れるのだろうか。きっと可愛い娘さんなんだろうな、私も一度くらい。紅をさしてみたいな、と。 当時の花摘み娘達は、紅花を染料に加工した後に出る廃液を布に染み込ませ、紅花染めにして、慎ましい生活に華を添えていたそうです。そういうおしゃれ、工夫こそ、後に生きる私達に遺して欲しい知恵なのだと思うのです。 4.いざ紅花資料館へ〜見て良し、染めて良し、食べて良しの紅花〜 紅花染めの体験をする前に紅花資料館で、歴史に触れ、感じながら、様々な展示品を観て楽しみました。資料館は河北町にあり、石畳の塀と板黒塀に囲まれた広大な敷地を持っまさに豪商屋敷跡地が資料館となっていました。 まずは、資料館周りに咲き誇る紅花畑に圧倒されました。棘のあるアザミのような黄色系オレンジの花々。「見て良し」ですね。敷地内には蔵座敷が幾つかあり、歴史、紅花交易が運んできた文化(大小の雛人形や、紅花衣装など、雅やかに飾られていました)を理解する事が出来ました。紅花染めの工程についても詳しく展示してありました。紅花の花びらに含まれる赤色色素は、なんと!!わずか1%。丁寧な時間のかかる工程を重ねて、黄色系の出し切っていく工程には、感動。そして紅花で染めあげる美しい赤にも感動しました。まさに「染めて良し」ですね。また、抗酸化作用を始め、様々な薬効があり、紅花油だけでなく、葉も花も、薬膳として使われたり、お茶として使われたり、「食べて良し」の植物であることがわかりました。綺麗になりたいので、紅花茶や紅花入り石鹸などを購入した事は言うまでもありません。 5.いよいよ紅花染め体験へ!〜神秘的な花、紅花〜 歴史的背景や紅花のうんちくを詰め込み、いよいよ紅花染めの体験です。紅花生産量の県内シェア6割を誇る白鷹町で中心的に活躍されている今野さん宅で体験させていただきました。 メニューは、①紅花ついての学習②紅花摘み③紅花染めの3本立て。 ①最上紅花は、なぜ、世界の宝物と言えるのか、歴史も含め、丁寧に説明していただきました。寒暖差のある山形では、紅の濃い良い紅花が咲くこともより良くわかりました。25度以上にならないと咲かない紅花。そして、何と!夏至から11日目の雑節「半夏生」に1輪だけポツンと花を咲かせるんだそうてす。その後はまるでリーダーに続くように次々と、花を咲かせていくのだとか。地元では、これを「半夏1輪(ひとつ)咲き」と呼ぶそうです。何とも神秘的な花ですね。 ②小雨降る中、カッパに長靴、棘防止にゴム手袋の完全防備で、紅花摘みを楽しみました。 紅花畑に広がるたくさんの艷やかな紅花。NONAのスタッフが横並びになり、紅花花弁部分だけを1人何百個と摘みました。これが楽しくて楽しくて止められない作業でした。紅花が放つ魅力なのでしょうか。小雨など全く気になりませんでした。 ③いよいよ紅花染めです。全過程は、1日ではとても出来ずにその一部をやらせていただきました。まずは、摘み取った紅花を綺麗な水で洗い、ゴミなどを取り除きます。甘くて良い匂いがほのかに香ります。そして、花びらをよく揉んで、黄色の色素を出すため、水洗いを繰り返します。花びらから出る油が凄くて、手がツルツルになりました。私達はここまで。その後、幾つもの工程を何日もかけて重ね、煎餅のような形を作り、天日に干して乾燥させ染めに使う元になる紅餅を作るようです。99%が黄色色素で、僅か1%が赤色色素。この希少な赤色色素を出すための手間は半端なものではありません。今も昔も高価なものである事に納得です。さあ!いよいよ紅餅を液化しての染め作業です。糸で縛って模様を作ったり、漬ける時間を調節したりして、スタッフ1人1人がその人らしい染めを仕上げました。 最上紅花愛に溢れる今野さんの活動は幅広く、最上紅花の素晴らしさを多くの方に知ってもらおうと奮闘中です。世界農業遺産にも申請中なのだそうです。今後も交流を深める事を約束し、NONA手まりをプレゼントして、紅花染め研修は、終了となりました。 6.NONAの"にほんのいろ"〜紅花の奇跡〜 この研修を経て、NONAは、可憐な紅色の糸を染め出しました。寒い時期の方が紅が濃く出るということで、今年の初染めで、何度も何度も黄色の色を出し切る作業を繰り返し、染めを重ね、紅を出しました。紅花の持つ1%の奇跡です。 植物から気付かされる季節の移ろいと神秘は、自然界からの贈り物です。この神秘をきちんと感じて、植物の生命のエネルギーを色として蘇らせた先人の知恵を絶やさぬよう、バトンを繋いでいくことがNONAの大切な仕事の一つです。 NONAは、これからも日本に残したい色を少しずつ紹介していこうと思っています。楽しみにお待ちくださいね。 NONAスタッフ 星野まり子 徳島「すくも藍」紀行はこちら
2024年7月 山形研修 〜最上紅花 1%の奇跡〜
もうすぐ1年前になろうとする思い出深い研修旅行を振り返り、紀行とします。 「紅花」と聞いて、何を思い浮かべますか?私は、薬効がある紅花オイル、血行促進になるハーブティー等の健康食品とドライフラワーのイメージ。恥ずかしながら、紅花染め?と聞いても、名前は紅花だから、赤く染まるのかな?ぐらいの知識でした。調べてみると、とても歴史のある草木染めであることがわかり、楽しみいっぱいで参加しました。 1.山形の誇りである紅花 紅花は、山形県が日本一の生産量を誇り、県花にもなっています。山形駅に到着すると、紅花が飾ってあり、写真、歴史が簡単に掲示してあったり、と紅花が「ようこそ!」と迎えてくれるようで、嬉しかったです。 研修を終える頃には、紅花が過去にもたらした莫大な富と文化と伝統がわかり、日本農業遺産、日本遺産になっている事、世界農業遺産申請中である事も納得しました。紅花の原産地はイスラエル。日本渡来は、3世紀中頃。平安時代は、「末摘花」と呼ばれ、源氏物語の巻名の一つともなっている雅な花てす。山形での栽培は、室町後期からで、貴族の艶やかな衣装の染料や口紅として重宝され、江戸時代全盛期を迎え、明治期に、化学染料や中国紅花の輸入で大打撃を受け、第二次大戦後一時期途絶えてしまったようです。戦後発見された種を元に復活し、現在に至ります。 2.山寺が支えた紅花文化 山寺(立石寺)が、深く関わった紅花栽培と紅花交易は、莫大な富と文化をこの地にもたらした、と言われているので、まずは山寺を訪ねることが旅の始まりとなりました。 鬱蒼と茂る木々に囲まれた千数百段もの参道石段と奇岩怪石の景勝地「山寺」。東北を代表する霊場であり、山自体がお寺となっているとの事。本堂には比叡山延暦寺から分火された千年以上燃え続けている”不滅の法灯”がありました。 この山門から続く石段は、一段登る毎に煩悩が消えていくと言われる修行の道でもあり、これを登りきった所に断崖絶壁に建てられたお堂(五大堂)があり、絶景を一望できるとの事です。スタッフは、皆さん感動されてましたが、私は当時、最大に肥えていて、小雨も降る中、しんどくて千段弱のところでギブアップ、、、。煩悩を全て消す事が出来ませんでした。それが私(笑)。 紅花栽培は、この寺を建立した慈覚大師の随行六人衆が起こした寺の領地で、江戸時代初期から行われたようです。最上川の肥沃な土地と朝霞の立ちやすい気候風土は、紅花を育む適地で、広く栽培されるようになり、日本一の紅花生産地に。 収穫された紅花は、紅花商人の屋敷で煎餅状に丸められた「紅餅」に加工され、最上川を介して上方へと運ばれ、紅染色、紅粉となって雅やかな京文化を支えることとなります。そして、紅花大尽と称される豪商、豪農が輩出されました。この時代、紅の価格は米の百倍、金の十倍。莫大な富を生み出し、財を誇示する屋敷を構えたとの事。この交易文化を色濃く残す白壁の蔵座敷が今でも数多く残っており、艶やかな雛人形や紅花染めの衣装を着て舞う舞楽が受け継がれ、華やかな彩りを添えています。 3.松尾芭蕉が詠んだ紅花の句〜富裕層だけでなく、庶民の生活に彩りを添えた紅花〜 松尾芭蕉は、元禄時代、山寺参詣の際に、あの有名な「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を詠んで、奥の細道に遺していますが、道すがら紅花を目にした際も句を2句詠んでいます。一つは「眉掃き(まゆはき)を俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花」です。いずれ女性のくちびるを彩る紅となる紅花。その形も女性の化粧に使う眉掃き(白粉をつけた後で眉を払うために使われた小さな刷毛)を彷彿とさせる、という意味のようです。艶やかな紅と唇。京女の艶姿を読んだものとされています。私はこの句より、奥の細道句集には遺されなかったけれど、「行く末は誰が肌ふれん紅の花」の方が断然好きです。一生懸命に紅花の花を摘む百姓の娘達。彼女達は、一生に一度もくちびるに紅をさすことは出来なかった。そんな彼女達の心情を詠んだものなのでは、と言われています。私の摘んでいるこの紅花は、将来誰の肌に触れるのだろうか。きっと可愛い娘さんなんだろうな、私も一度くらい。紅をさしてみたいな、と。 当時の花摘み娘達は、紅花を染料に加工した後に出る廃液を布に染み込ませ、紅花染めにして、慎ましい生活に華を添えていたそうです。そういうおしゃれ、工夫こそ、後に生きる私達に遺して欲しい知恵なのだと思うのです。 4.いざ紅花資料館へ〜見て良し、染めて良し、食べて良しの紅花〜 紅花染めの体験をする前に紅花資料館で、歴史に触れ、感じながら、様々な展示品を観て楽しみました。資料館は河北町にあり、石畳の塀と板黒塀に囲まれた広大な敷地を持っまさに豪商屋敷跡地が資料館となっていました。 まずは、資料館周りに咲き誇る紅花畑に圧倒されました。棘のあるアザミのような黄色系オレンジの花々。「見て良し」ですね。敷地内には蔵座敷が幾つかあり、歴史、紅花交易が運んできた文化(大小の雛人形や、紅花衣装など、雅やかに飾られていました)を理解する事が出来ました。紅花染めの工程についても詳しく展示してありました。紅花の花びらに含まれる赤色色素は、なんと!!わずか1%。丁寧な時間のかかる工程を重ねて、黄色系の出し切っていく工程には、感動。そして紅花で染めあげる美しい赤にも感動しました。まさに「染めて良し」ですね。また、抗酸化作用を始め、様々な薬効があり、紅花油だけでなく、葉も花も、薬膳として使われたり、お茶として使われたり、「食べて良し」の植物であることがわかりました。綺麗になりたいので、紅花茶や紅花入り石鹸などを購入した事は言うまでもありません。 5.いよいよ紅花染め体験へ!〜神秘的な花、紅花〜 歴史的背景や紅花のうんちくを詰め込み、いよいよ紅花染めの体験です。紅花生産量の県内シェア6割を誇る白鷹町で中心的に活躍されている今野さん宅で体験させていただきました。 メニューは、①紅花ついての学習②紅花摘み③紅花染めの3本立て。 ①最上紅花は、なぜ、世界の宝物と言えるのか、歴史も含め、丁寧に説明していただきました。寒暖差のある山形では、紅の濃い良い紅花が咲くこともより良くわかりました。25度以上にならないと咲かない紅花。そして、何と!夏至から11日目の雑節「半夏生」に1輪だけポツンと花を咲かせるんだそうてす。その後はまるでリーダーに続くように次々と、花を咲かせていくのだとか。地元では、これを「半夏1輪(ひとつ)咲き」と呼ぶそうです。何とも神秘的な花ですね。 ②小雨降る中、カッパに長靴、棘防止にゴム手袋の完全防備で、紅花摘みを楽しみました。 紅花畑に広がるたくさんの艷やかな紅花。NONAのスタッフが横並びになり、紅花花弁部分だけを1人何百個と摘みました。これが楽しくて楽しくて止められない作業でした。紅花が放つ魅力なのでしょうか。小雨など全く気になりませんでした。 ③いよいよ紅花染めです。全過程は、1日ではとても出来ずにその一部をやらせていただきました。まずは、摘み取った紅花を綺麗な水で洗い、ゴミなどを取り除きます。甘くて良い匂いがほのかに香ります。そして、花びらをよく揉んで、黄色の色素を出すため、水洗いを繰り返します。花びらから出る油が凄くて、手がツルツルになりました。私達はここまで。その後、幾つもの工程を何日もかけて重ね、煎餅のような形を作り、天日に干して乾燥させ染めに使う元になる紅餅を作るようです。99%が黄色色素で、僅か1%が赤色色素。この希少な赤色色素を出すための手間は半端なものではありません。今も昔も高価なものである事に納得です。さあ!いよいよ紅餅を液化しての染め作業です。糸で縛って模様を作ったり、漬ける時間を調節したりして、スタッフ1人1人がその人らしい染めを仕上げました。 最上紅花愛に溢れる今野さんの活動は幅広く、最上紅花の素晴らしさを多くの方に知ってもらおうと奮闘中です。世界農業遺産にも申請中なのだそうです。今後も交流を深める事を約束し、NONA手まりをプレゼントして、紅花染め研修は、終了となりました。 6.NONAの"にほんのいろ"〜紅花の奇跡〜 この研修を経て、NONAは、可憐な紅色の糸を染め出しました。寒い時期の方が紅が濃く出るということで、今年の初染めで、何度も何度も黄色の色を出し切る作業を繰り返し、染めを重ね、紅を出しました。紅花の持つ1%の奇跡です。 植物から気付かされる季節の移ろいと神秘は、自然界からの贈り物です。この神秘をきちんと感じて、植物の生命のエネルギーを色として蘇らせた先人の知恵を絶やさぬよう、バトンを繋いでいくことがNONAの大切な仕事の一つです。 NONAは、これからも日本に残したい色を少しずつ紹介していこうと思っています。楽しみにお待ちくださいね。 NONAスタッフ 星野まり子 徳島「すくも藍」紀行はこちら

#nonatabigram William Morris Galleryを訪ねて
青空が毎日続いたロンドン滞在時。爽やかな夏らしいロンドンらしい6月の気候ではなく、日本の真夏のように暑くて、若干、バテ気味になりながらも今回は、必ず行こうと思っていたWilliam Morris Galleryを訪問しました。
#nonatabigram William Morris Galleryを訪ねて
青空が毎日続いたロンドン滞在時。爽やかな夏らしいロンドンらしい6月の気候ではなく、日本の真夏のように暑くて、若干、バテ気味になりながらも今回は、必ず行こうと思っていたWilliam Morris Galleryを訪問しました。

NONA KAL 2023開催のお知らせ
🧶お知らせ🍂秋らしい風がようやく吹き始めました。NONAでは、秋冬の活動として、いつものコットンとは違う羊毛糸を染めて編む楽しみを皆さまと共有したいということで2022年度から #nonakal を始めました。針って?表編み?と全くのゼロから始めたスタッフも編んでますよ〜。 今年は、より多くの人と楽しめたらと #nonakal2023 を開催します!
NONA KAL 2023開催のお知らせ
🧶お知らせ🍂秋らしい風がようやく吹き始めました。NONAでは、秋冬の活動として、いつものコットンとは違う羊毛糸を染めて編む楽しみを皆さまと共有したいということで2022年度から #nonakal を始めました。針って?表編み?と全くのゼロから始めたスタッフも編んでますよ〜。 今年は、より多くの人と楽しめたらと #nonakal2023 を開催します!

#nonatabigram デンマークの草木染めワークショップ G-ULD にて Vol.2
デンマークの草木染め毛糸をつくるG-ULDで開催されるインターナショナルクラスの草木染めワークショップに参加したときの話、最終回です。 Vol.1はこちらから。
#nonatabigram デンマークの草木染めワークショップ G-ULD にて Vol.2
デンマークの草木染め毛糸をつくるG-ULDで開催されるインターナショナルクラスの草木染めワークショップに参加したときの話、最終回です。 Vol.1はこちらから。