「いつかは、すくも藍で染めたい」
——そう願い続けて、どれほどの年月を重ねてきたでしょう。
草木染めをすればするほど、その憧れは大きく膨らみ、ついに今年、NONAでのすくも藍への挑戦が始まりました。


はじめの一歩
やりたいと願いながらも、「いつか」と先延ばしにしてきたこと。
けれども仲間と共に歩む今だからこそ、「できる」と思えたのです。
すくも藍で染めるとは——。
藍師が育てた、たで藍を乾燥・発酵させ、すくもとし、染師が天然の素材だけで藍を建て、布や糸に色を宿す。
一度建てた後も日々の手入れを欠かせない、根気の要る仕事です。
けれども憧れは、挑戦の原動力となりました。
徳島の藍師を訪ねて
ご縁がつながり、藍の本場・徳島へ。
梅雨の晴れ間、吉野川を越えて「藍住町」の名を目にしたとき、胸が高鳴りました。


「Watanabe's」を訪れると、藍師・渡辺健太さんが、土づくりから藍の栽培、収穫、すくも作り、染色まで一貫して取り組む姿に圧倒されました。
すぐ隣の養豚場の廃棄物で堆肥を作り、山羊が草を食べ、地域と共に営まれる畑は、まさに未来を見据えた藍しごとでした。


未来に藍を残そうとする強い眼差しが印象的でその真摯なまなざしに触れ、私たちもまた、藍を未来に伝える責任を感じずにはいられませんでした。
藍甕と向き合う時間
工房には状態の違う藍甕がずらりと並び、毎日丁寧にひとつづつ記録が取られています。
NONAメンバーそれぞれが思い思いの素材を藍甕に手をつけて染めていきます。
若い藍甕は濃く力強く、年を重ねた甕は淡くも繊細な色をくれる。
重ね染めの作業に夢中になり、自然の神秘と向き合う時間が何より心地よく感じられました。
そして「すくも藍を建てる研修」では、加藤先生の講義を受け、藍を建てるプロセスを学びました。丁寧で分かりやすい説明に、心から納得し、これから自分たちで建てていく勇気をもらいました。
歴史と文化を未来へ

藍を学びに立ち寄った「三木文庫」では、阿波藍の歴史や道具、人形浄瑠璃など阿波文化とのつながりに触れ、藍師がいて、三木商会などの藍商がいる、藍が地域文化を支えてきた深さを実感しました。
学芸員・船井さんからいただいた「澄んだ色を染めていってね」という言葉は、私たちの胸に深く刻まれています。
さらに「大谷焼窯元 森陶器」では、巨大な藍甕を作る職人の姿を目にしました。
職人がもう1名になってしまったと伺い、ものづくりを続ける難しさと尊さを改めて感じました。


にほんのいろを未来へ
化学染料の時代を迎えても、全てを否定せず、化学染料の商売も取り入れながらも、阿波藍を守った人々。そうして知恵と努力で受け継がれてきた「にほんのいろ」には、数えきれない人々の想いと歴史が宿っています。
NONAの「にほんのいろ」シリーズもまた、その文化を未来へつなぐ小さな一歩でありたい。
この徳島での貴重な藍研修の後、無事に藍が建ち、NONA自家製の藍を守って糸を染めつけています。
1本の藍色の糸に人類の夢とロマン、歴史と愛が詰まっています。
どうぞ、これからも「にほんのいろ」を見守っていただけたら嬉しいです。
梨佳


Watanabe’s https://watanabes.jp
三木文庫 https://www.mikibunko.jp
森陶器 https://morigama.jp