{くすだま}
香料を錦(にしき)の袋に詰め、薬草・造花や五色の糸を添えた飾り。端午(たんご)に、不浄・邪気をはらうとして、柱などにかけたもの。
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端午の節句といえば、兄の立派な兜のお飾りを思い出します。そして鯉のぼりでしょうか。長男が生まれた時には、実家では兄の鯉のぼりを取り出してきて、立てました。優雅に立派に流れる鯉のぼりを見て、ご近所さんが、お祝いの言葉を掛けてくれ、そして、それを何よりも誇らしげに眺める父と母の顔を覚えています。ああ、鯉のぼりは、家族を繋いでいく、そういう意味があったのかと身をもって体験した瞬間でした。
手まりや草木染めで季節とともに暮らす生活が長くなってくると日本古来の風習の歴史もとても身近で面白く感じるようになりました。
菖蒲(しょうぶ)が、尚武(武芸を重んじること)に通じる上、菖蒲の葉の形が刀に似ているということから、今の兜を飾る武家社会の影響を強く受けた風習が今の端午の節句の主流に思えます。昔はそれはそれは出生率も低く、生まれた子も生存率が低かったので、男系社会では男の子を残していくことは非常に重要なことだったと想像に難くありません。鎌倉時代の武士の台頭から「端午の節句」が武家社会の中で重要な行事に変わっていきます。
そんな勇ましいイメージが私の中にあった端午の節句ですが、薬玉という植物や自然に寄り添った風習があった数年前に知りました。私が息子をもつ親で兜を飾るのについて実はちょっと・・・正直抵抗がありました。戦いには行かせたくない・・・・。そういう勇ましいイメージを男の子に押し付けなくてもいいんじゃないか・・・なんとなくの違和感でした。鯉のぼりは逆に大好きなのです。鯉のぼりはまた風習の由来としては違うところになるようですが、こちらも江戸時代からとやっぱり風習としては「最近」の出来事なのですね。
さて、薬玉(くすだま)は薬の玉では、最初の最初は、平安時代のころぐらいから、端午の時節に咲く菖蒲やよもぎ、を束ね、五色の糸を垂らしたものだったようです。それにお香が加えられたのは、また後の鎌倉時代とも言われています。
旧暦の端午の節句、5月5日頃は、春の農作業が一区切りつき、入梅を前にする季節の変わり目でもあります。こうした時期は特に体調を崩しやすく、また、梅雨の影響で衛生環境も悪化します。「薬草」を取り、これから向かうジメジメした梅雨の間の「無病息災を願う」のは、現代に生きる私どもでも想像できて、その昔はもっと切実なものであったと思います。
今年は旧暦では端午の節句は、6月3日です。ちょうど東京も梅雨を迎えそうです。
『薬玉』の意味がとても自分の心にぐっときて、それ以来、薬玉をインスピレーションとした手まりづくりや商品づくりの試作を重ねてきました。
今年はようやくプロジェクトに着手できて、まず、生まれたのが「薬玉NONAつづら」。
NONAではまずは春の薬草、和のハーブと呼ばれる「よもぎ」「どぐだみ」「楠」で染めをしました。染めているときはなんだか薬草茶を淹れているような気分になりました。優しい春の恵を五行の色も一緒に「NONAつづら」に詰めました。邪気を払いながら一年の健康を願いながら糸仕事を。
楠、よもぎ、どくだみで染めた色々
NONAつづらの紐と茜のボタン
どくだみ染めの糸が染め上がった時の様子
どくだみ
「薬玉」第二弾の商品 アロマスプレー
そして、「薬玉」をテーマに手仕事アロマスプレーを作りました。
今年はNONAでは「香り」を柱にものづくりをしているので、「香り」といえば、NONAでは手仕事アロマスプレー UNKNOWN。その次の香りを企画してみました。
また、私、梨佳の想像の薬玉の香りオリジナルブレンドを、私のアロマの先生で現役薬剤師でもある、ハーバルラボ主宰のカナさんに監修・製造していただきました。
香りは、「渋い」かもしれませんが、こっそり伝えたい「大好き」な香りです。
むかしはお香を薬玉につけました。お香と精油はまた全然違うのですが、お香に使われた香りの精油、丁子(クローブ)、パチュリ、サンダルウッドに、和の香り「ゆず」も加え、厳かで、そして和のハーバルなイメージで作りました。
梅雨の時期はぜひ「香り」に力を借りて、手仕事を進めてみてください。手仕事前に空間にスプレーをおすすめします。
しかしながら、こちらの薬玉スプレーは、絶賛準備中です。もう少しお待ちください!
また販売時期別途お知らせします!
長くなりましたが、『薬玉』の習慣をNONAを通じて知っていただいて、今と昔がくっつくような経験が少しでも暮らしが豊かになる経験となるととても嬉しいです。